アグストリア全土を制圧したシグルド達一行であったが、その後彼らを待っていたのは、反逆者として追われる運命であった。しかし、それ以上にシグルドを落ち込ませたのは、彼の妻であるディアドラが突然疾走したことである。
一行は北の大国・シレジアのラーナ女王の行為で一時シレジアへ身を隠すことになった。

5.空に舞う(前編)■


レヴィンは憂鬱な日々をおくっていた。
彼は吟遊詩人として旅をしていたところ、町が戦いに巻き込まれるのを防ぐためにシグルドたちの軍に加わることになった。それ後、彼の人柄に引かれたレヴィンはそのまま一行に同行することになったのである。

「まいったな、逃げ出したところに戻ってくるなんて」

そう、彼は祖国であるシレジアから旅に出たのである。―もう二度と戻らぬ決意をして―

レヴィンは何気なくセイレーン城をうろついていたが、そこへよく見知った女性の騎士が声をかけてきた。

「レヴィン様!!」

振り返って確かめるまでもなく、誰であるかは解った。
「…マーニャか…」

振り返ると、白い鎧を纏った女性がいた。名前はマーニャ、シレジアで知らぬものはない四天馬騎士の筆頭、つまりはシレジア軍での最強を誇るファルコンナイトであった。
目と髪がシレジアグリーンで見るものを引き付ける。ペガサスに跨り空を舞う彼女の姿は気高く美しいということでも有名であった。

「王子!!何て格好をなさっているのですか。こんなところで吟遊詩人の真似事をなさっているなんて、ラーナ様がどれほど御心を痛められたか…!!」

「マーニャ、シレジアの王子は死んだ。そう思えといわなかったか?母上には申し訳ないことをしたと思っている…しかし、俺がここにいたら確実に継承問題が起こってしまうのだぞ」

―そう、レヴィンはシレジアの王子であった。いずれは王位を引き継ぐはずであったが、叔父であるダッカー公・マイオス公が王位を狙っていたため、戦いが起こり民にいらぬ迷惑がかかるのを止めるためにシレジアを出たのであった。

「まぁ、運命とは皮肉なことに戻ってきてしまったが。」

自嘲気味にそういうレヴィンに対して、マーニャは同情をしなかった。彼女は毅然として言葉を返す。

「いいえ、シレジアの次の王、私達が王とお呼びして御使えする王はレヴィン様だけでございます。決してダッカー公やマイオス王ではございません!!どうか…」

「…もういい、それ以上言わなくても言いたいことくらいは解っている!」
マーニャの言葉を制し、レヴィンは踵を返す。



レヴィンはマーニャから逃げるようにして立ち去った。
彼女のまっすぐな瞳を見ることに耐えられなかった。
…自分の運命に立ち向かう勇気が持てなかった。



レヴィンは1人になりたかった。やや早足で城をでると、セイレーン城からやや東にある一本の大きな木がある崖に向かった。
そこは彼が幼い頃、1人になりたい時によく行った場所であった。

「ここは変わらないな…」

シレジアでは雪は一年中降る。北に位置するため、気候は寒い。しかし、レヴィンには心地よかった。彼の周りはいつも穏やかな風が包んでくれ、極寒というほどの寒さを感じなかった。

「―解っている、オレの責任がどれだけ重いかということも、皆にどれほど大切に思われているかも。そして、オレが卑怯者だということも。」

それでも戦いを起こすのは怖かった。自分の親しかった者達が戦いに巻き込まれるのはどうしても耐えられなかった…だから逃げ出したのだ、自分の責任を放り出して。

シレジアに逃げるとわかった時、本当は逃げ出してしまおうと思った。人々にどんな顔をして会えというのだろう。逃げ出したレヴィンには皆に会わせる顔がなかった。
何より、母であるラーナ、そしてマーニャに会うのが怖かった。

民からの期待を象徴する人物がマーニャであり、レヴィンを誰よりも大切に思っている人物がラーナだった。

母に再会した時、どれほど心配をしてくれていたかすぐにわかった。依然と変わらず、凛々しい姿であったが、どこか疲れたというところがあることは隠せていなかった。

それでも、母が心配してくれていたのが嬉しくて、いつものように冗談を言って照れているのを隠したりした。マーニャも、依然と同じように接してくれた。本当にレヴィンの帰還を喜んで。




しばらく無言のまま崖から景色を眺めていた。
何も考えなくていい時間が心地よかった。

「くしゅっ」

突然頭上からくしゃみがした。上を見ると誰かが木に登っていたようだった。

「誰だ?」

「………」

「誰かいるのか?」

「………」
何度声をかけても反応はない。やれやれ、と木に登ってみると、銀髪の少女がい眠っていた。

シレジアに銀髪の人間はまずいない。そのほとんどは彼と同じグリーンで、他の色の髪は珍しかった。

「この髪…たしか仲間にフリージの娘がいたな…」

何時も明るく振舞っている、悩みのなさそうな能天気な奴だったか…―にして、こんなところで眠るなんて、風邪を引くきか?

おい、と声をかけたが、起きる様子はなかった。肩を揺すろうと手を伸ばしたとき、彼女の瞳から涙が零れているのに気がついた。




レヴィンはしばし無言で彼女を見つめていたが、やがて起こすことを止め少女を城まで連れていくことにした。









(空に舞う・続く)





<NEXT>
<BACK>


後書き

5発目前編。

メインはレヴィンとマーニャ。

マーニャ好きですー。どれぼど仲間になればいいのに、と思ったことか。
お姉さん!って感じですよね。

…ごめんんさい、フュリー好きな方、子供時代のあるエピソードが書きたいがために、彼女には別の方とのお話を用意しております。
本編では書けないので、13以降のお題のどこか、で書きます♪


感想・ご意見がありましたら、こちらまで。
誤字・脱字などもありましたら指摘頂けると助かります。