■33.おかえり&ただいま■
「そろそろ帰ろうか、シグルド」
日も傾き、今からエンバス城に帰ると丁度夕食時だ、という頃あいを見計らって、私はシグルドに声をかけた。
ヴェルダン全土を制圧して、早1ヶ月だ。
シグルドはクランベル王から暫くヴェルダンを統治するように言われ、私もその手伝いをしようとレンスターに帰らず、まだエンバスに留まっていた。
まぁ、本来ならレンスターの王子という立場から祖国へ帰らなければならないのはわかっていたが、困ったときはお互いに力を貸すという約束もあるし、最愛の妻エスリンからの頼みもあったからな。
シグルドは、何と言うか生真面目な奴だから、一旦見回りをはじめると、日が暮れても終るまで続ける奴だ。
まぁ、それがいいところではあるが、付き合う身にもなって欲しいと思うこともしばしばあるのだが。
ま、そんなことだから私はそろそろ帰らないか、とシグルドに呼びかけた。
「あ、ああ、もうそんな時間か。もう少し見て回れると思っていたんだが…」
あー、そんなことだと思った。
「…おいおい、これ以上見回りをしてると、日が暮れても帰れないぞ。」
「すまないな、キュアン」
ホントに、世話が焼ける親友だな。
…ちょっとからかってやるかな。
「ま、私はいいが、心配なのはディアドラだな。」
「は?」
…まさか、解ってないのか?まー、シグルドだからな。
これはディアドラも苦労していることだろう。
「お前な…、わからないのか?」
「ああ、どうしてディアドラが関係するんだ?彼女はエンバス城にいるから安全だ」
本気でわかってないな、シグルド。まさかここまで天然だったとは。
戦いのときとはうって変わって鈍いぞ。
「・・・シグルド・・・そういうことじゃなくて、お前は新婚だろう?」
「???ああ、それが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!///キュアン!!」
「ふっ、やっとわかったか。」
言葉に出さないとわからないなんて、ホントに世話の焼ける親友だ。
…世話焼きついでに、少しからかってやるか。
「新婚なのに、妻を一人で長時間放っておくのはどうかと思うぞ」
「何を!」
「そんなことない、といえるか?シグルド」
「そっそれは・・・」
ふん、言葉につまってるな、シグルド。
と、そんなたわいもない言い合いをしながら、私達はエンバス城に着いた。
隣を見ると、既にシグルドの姿はない。
・・・馬を兵士に預けるとすぐに走ってどこかへ言ったらしい。
ちょっと言いすぎたかな?
苦笑を隠しながら、私も自分の馬を小屋へ連れていく。
「お疲れさん、また明日な。」
愛馬にそう言って、私も歩き出す。
それが早足になって、自然と笑みがこぼれてしまうのは、きっと待っていてくれる人がいるから、だろうな。
部屋の前に着き、扉を開けると一番に愛しい君の声が聞こえる。
「お帰りなさい、キュアン」
万面の笑みを浮べたエスリンがお茶を入れていた。
「ただいま、エスリン。やっぱり城は落ちつくね。」
「ええ、待っていたのよ。お兄様が帰っていらっしゃったから、キュアンも帰ったと思って今お茶を入れたところなの。」
「ありがとう。エスリンの入れるお茶は絶品だからな」
椅子に座って、エスリンからカップを受け取る。
こういう瞬間が、帰ってきたって気がする時だな。
「ねぇ?キュアン、今日はどうだった??」
それから、食事までの少し間、2人で今日の出来事について話すのが私達の日課だ。
エスリンは楽しそうに城内の出来事を話す。私も、見回りで見つけたウサギや景色のいい場所の話などをした。
「ねぇ。キュアン。私貴方が無事に帰って着てくれて、ホントに幸せだわ。」
「どうしたんだい、急に。」
「ううん、なんでもないの。ただ、私は幸せだな、と思って。」
そういって、抱きついてくるエスリンを抱きしめ返す。
・・・帰ってくると、迎えてくれる人がいるって、いいな。
私に笑いかけるエスリンを見てそう思う。
これから先も、こういう時間が過ごせるくように、私は願う。
―これからも、ずっと『おかえり』『ただいま』と言えるように。
後日・余談
あのあと、シグルドはディアドラに対してかなり甘かった。
それからは、見回りも適度な頃合で引き上げるようになったし、行った先で土産を買うなど、マメなことをしているのを目にするようになった。
・・・この間からかったのが効いたかな?
そんな様子を微笑ましく思ったが、それは口にしないでおこうか。
エルトシャンが聞いたら、目を丸くするだろうな。
(おかえり&ただいま・終わり)
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後書き
サイドストーリー。番号としては33
でも書いた順番は、11発目
このタイトルは、キュアン様とエスリンのためにある!!と見た瞬間に思いました。
キュアンxエスリンフォーエバー。
いつまでも好きです。
たとえ、新作が出ても、いつまでも信者で居続けます!私は。
ちょっとシリアスなのが続いたんで、ちょこっと緩めに。
キュアンの視点で書いてみました。
キャラ視点ってはじめてだったので、どうでしょう。やっぱナレーション入れないのは厳しかったですね。
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