24.エッダ






「神よ、過酷な運命の中にある我らに、どうぞ御慈悲を・・・・・・・・・・・・」


アグストリア北西に建つブラギの塔で神の声を聞いた後、クロードは以前にも増して長く祈りを奉げるようになった。

『シグルド公子達は負ける。』

神はそう告げた。
そして、エッダの神父クロードはそれを見つめる者としての役目を担うこととなった。

…決して運命は変わることはない。

「シレジアまで逃げてきたシグルド公子に、御告げを伝えるか否か・・・・・・」



 …きっと彼なら、それでも私は進みます、と言うだろう。
 騎士である誇りと、運命を恐れない勇気を持って。

 彼はそういうう人物だ。
 だから、皆彼のもとに集うのでしょう。
 私も、その中の一人なのだから。









エッダ家は、見守る者という使命を受けている。
神の御告げを聞き、皆に伝える。

癒しの術を得意とし、どこの味方もせず、中立を保つ。


そんなエッダ家の当主である自分が、シグルド公子を助けたいと願ってしまった。

「エッダは、中立でなければならない」

そう呟いて、溜息を漏らす。

最初、クロードは中立者として見守るという義務感からシグルドの軍へ同行することにした。

しかし、軍に参加する中で、彼の気持ちに変化があらわれた。
シグルド公子と彼のもとに集う仲間たちを見ているうちに、クロードの気持ちは揺れ動いていた。























「クロード様〜!!」

窓の外から、クロードを呼ぶ声が聞こえた。
外を見ると、踊り子のシルヴィアが手を振っていた。

いつしか彼女はクロードにとってかけがえのない存在になっていた。
踊りを踊る彼女の周りには、いつも多くの人だかりが出来ていた。

「クロード様も見ませんか?私の踊り♪」

シルヴィアは満面の笑みでそう呼びかけた。
神父が穏やかな人に安心感を与える微笑なら、シルヴィアのそれは人に元気を与える華やかなものだ。
クロードも、この少女の笑顔を好ましく思っていた。

「すぐに行きます」

そう言って、クロードは庭へと出向いた。





























クロードが着くと、もう踊りははじまっていた。

いつも明るく元気で、どちらかというと可愛らしいという表現が似合うシルヴィアである。
が、踊りの時だけは別であった。

彼女の周りは神秘的なオーラが広がり、見ているものに勇気を与える。

普段とは違い、表情は真剣だ。
色気というよりは幻想的という表現がぴったりとくる。

クロードはそんな彼女を愛しげに見つめた。




踊り終えた彼女には、大きな歓声と拍手が送られた。
人だかりから離れたところにクロードを発見したシルヴィアは、真っ直ぐに彼のもとへと歩みを進める。






「ね!どうだった??」

シルヴィアは真っ先に感想を問う。
クロードは勿論こう答える。「素敵でした」と。

「私としてはね〜・・・・・・・・・・・(延々と踊りの説明を)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

その様子をクロードは微笑んで見つめる。
これはいつものことで、クルクルと表情の彼女をみるのが、クロードの楽しみでもあった。。



―私とは違う癒しの形ですね。
でも、とても温かい気持ちになれる。


「ねぇ、クロード様、聞いてるの??」

ただシルヴィアを見つめ、微笑んでいるだけのクロードに、シルヴィアは尋ねる。

「ええ、聞いていますよ。お世辞でなく、本当に素敵な踊りでした。
貴女の踊りは、見ていると元気になれます」

「えへへ」

クロードにそう言われ、シルヴィアは、照れて顔が真っ赤に染まる。




「・・・・・・・私はそのようなことはできませんから」

「そんなことない!!神父様はいつも皆に安らぎを与えてます。私も癒されてるんだから!!」

顔は微笑んでいるが、自嘲めいた事を言うクロードに、シルヴィアは猛反発した。

その一生懸命さがクロードには可愛らしく見える。


―私はそんなに出来た人間ではないのですが・・・

苦笑を浮べながら、シルヴィアを見る。
いつも微笑んでいるだけで、それ以外の表情はほとんどみせないクロード。
それに対してシルヴィアは、コロコロとよく表情が変わる。喜怒哀楽をはっきり表すタイプだ。


「貴女のそういう素直な生き方に、皆は癒されるのでしょうね」

クロードはそう呟く。

「クロード様、どうかしたんですか?」

いつもと少し違うクロードの様子に、シルヴィアは不安げな表情で問うた。

「いえ、ただそう思ったんです。」

「ふ〜ん。この頃のクロード様は、何か思いつめているみたい。
・・・私じゃ力になれないかもしれないけど、言ってくださいね!」

いつでも聞きます!と胸を叩いて言う彼女を頼もしく思う。
けれど、クロードは全てを話すわけにはいかなかった。

―シルヴィアさんは、知らなくていいんです。
戦いの結末など。

貴女には、いつまでのその笑顔のままで・・・・・・・


シルヴィアと話しているうちに、クロードは一つの結論に達した。

自分は見守るという役目を果たそう、と。

はなして、皆の・・・シルヴィアの笑顔を奪うことになるよりは、少しの間だけでもこの軍に安らぎを、と思うのであった。




―神よ、一時の平和を我らに―






(エッダ・終わり)





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後書き

サイドストーリー。番号としては24
でも書いた順番は、17発目


エッダ=中立・・・クロードは気分的には中立なのか?というお話のつもりです。
結論・・・かなりシグリン寄。

シルヴィアは、エッダの遠い血縁希望。
私が、妹説否定派なので。


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