■21.フリージ■
「・・・・・・・・・・・・・・お父様」
ティルテュは生まれて初めての絶望を味わった。
彼女の専売特許でもある『怒り』を通り越してしまっていた。
何を考えるでもなく、ただじっと砂漠の向こうを見つめている。
彼女は気付いているだろうか、目から絶え間なく流れる涙に。
・・・そして悲しげな顔で見つめる一人の男性に。
トズル軍を倒し、イード砂漠を越え、ティルテュは必死で頑張った。
父と会うただ、その瞬間の為に。
『父と向き合う』シレジアでティルテュはそう決心していた。
父レプトールがシグルドを反逆者として仕立て上げたという事実を知ったとき、嘘だと叫び、泣きじゃくった。
ティルテュの記憶に残っているのは優しかった父。
血縁以外には非情と言われ、恐れられていたけれど、家族だけには優しかった。
父のした事で、軍の皆は自分を責めなかった。
誰もがティルテュに気を使ってくれた。
―同じ立場であるはずのレックスまでが。
「ねぇ、レックス。このままシグルド公子たちと一緒に行くの?」
「ああ」
「お父様と戦うことになっても?」
「仕方ないさ、これも運命ってやつだ」
「そう」
「お前は帰れよ」
「ううん、私も戦うよ」
「そうか。お互い大変になるな」
シレジアで、悩んだ時レックスとそういう会話をした。
このとき、ティルテュは決めたのだ。
父を説得する、と。
でも、レプトールは耳を貸さなかった。
ティルテュが父の前に飛び出して言ったとき、レプトールは多少の動揺を見せた。
しかし、すぐに全てを悟ったように躊躇いもなくティルテュに攻撃を仕掛けてきた。
説得に耳を貸さなかった父。
攻撃を仕掛けられても、ティルテュには反撃をする事ができなかった。
側にいた誰かに名前を呼ばれ、庇われたため、攻撃は交わせたようだった。
何が起こったのか頭の中で整理できず、気付くと城へ引いていく父の後姿があった。
「ティルテュ」
「・・・・・・・・・・・・・・レヴィン」
振り返ると、恋人のレヴィンが立っていた。
そして、少し離れたところには仲間たちが心配そうに彼女を見つめていた。
「・・・・・あはは・・・・・・・・・・・説得、失敗・・・・・しちゃった」
心配かけまいと、力なく笑顔を浮べる。
レヴィンはいたたまれなくて、ただティルテュを抱きしめる。
「もういい、もういいんだ、ティルテュ」
「・・・・・・・・・・・・・・私・・・・・・・・・・お父様を・・・・・・・・・」
「無理に笑わなくなていい」
「・・・・・・・・・・・・・・・だって・・・・・・・・」
レヴィンに抱きしめられて、優しい言葉がかけられる。
普段のいい加減な彼ではなくて、本当の彼。
そんなレヴィンの優しさに触れ、ティルテュの目からは止まっていた涙が再び溢れ出す。
「・・・・・・・・・・・・・・どう・・・て・・・・・・・・・・・」
「ん?」
「どうしてこんなに優しいの?」
「・・・・・・・・ティルテュ」
ティルテュはそれ以上何も言わなかった。
そんな彼女みながら、レヴィンはある考えを口にする。
「・・・・・・・・・・・ティルテュ、シレジアへ帰れ」
その一言にティルテュは一瞬真っ白になる。
「!!!!」
はっとしてレヴィンを見上げる。
「シレジアには、母上がいる。オレも戦いが終ったらすぐに行くから、待っててくれないか?」
真剣な顔でそう言うレヴィン。
彼が本気でそう言っていることは明らかであった。
「いや、どうしてそんな事言うの!?私だって、この軍の仲間だよ??」
「ティルテュ」
「私、足手まとい?」
「そんなことない」
「今回のことは反省してる!気をつけるから!!」
「そうじゃないんだ!」
「レヴィンが心配してくれるのわかってる。私も皆が好きだから、レヴィンが大好きだから、ここにいたいの」
「・・・・・それとね、私やっぱりお父様を嫌いになれない。だから・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・ティルテュ」
「いっしょに行ってもいいよね?」
「・・・・・・・・・・・・・」
ティルテュの必死の懇願に、何も言えなくなるレヴィン。
それを肯定にとったティルテュは、何も言わずにレヴィンに抱きついた手に力を込めた。
★その後で★
レ「おまえ、次からはオレの側を離れるなよ」
テ「うん。わかってる」
レ「もうこの前のようなことはごめんだからな・・・・・」
テ「え?」
レ「・・・・・・・・・・・・・・・なんでもないさ」
(フリージ・終わり)
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後書き
サイドストーリー。番号としては21
でも書いた順番は、16発目
ティルテュのお話。
ティルテュは父を殺せません。だから、この話では、レプトールさんに逃げてもらいました。
・・・フリージっていうよりは、レヴィティルって感じになっちゃいましたね(笑)
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