■18.ドズル■
「ちっ!やっぱり来やがったか!!」
…まぁ、避けられないことは覚悟していたが…
「正直目の当たりにすると…キツイな…」
レックスは今にもこちらに向けて進軍してくるドズルの兵を目にしていた。
トズル公爵ランゴバルト卿率いるグラオリッターである。幼いころ、レックスはいつもその凱旋を見ていた。
…いつかあの一員になるものだと思っていたたが…皮肉なものだな。
「レックス?」
レックスのなんとも言いがたい気持ちを察し、傍らに立つ恋人…今では妻であるアイラが心配そうにレックスを見上げる。
「大丈夫だ。腹はくくった」
「だが!」
「前に言っただろう?この戦いを終らせて供にイザークへ行こうと」
レックスは苦笑を浮べる。
そう、もう引くわけにはいかなかった。自分の最愛の人の故国を侵略した父は許すことはできないし、それを止めることが出来なかったレックス自身にも責任を感じる。
「オレはここで引くわけにはいかない。」
「レックス…大丈夫だ、一人じゃない。私がいる」
「…ああ、お前は強情だからな」
「終ったら、2人でイザークへ子供たちを迎えに行こう」
「わかってるさ。…アイラ、ありがとな」
レックスは愛しい妻を見つめる。子どもたちと逃げろと言ったとき、怒り狂ったように反対し供に戦うと言い切ったアイラ。自分がこれから対峙しようとしている敵は実の父であるため、正直に言って彼女が傍にいてくれることがありがたかった。
口は悪いが、その分内面がとても繊細なで、敏感な彼女はきっと自分の苦しい気持ちを悟って、片時も離れず供にいてくれているのだろう。
アイラは不器用な自分を申し訳なく思っているらしいが、レックスはそんな彼女だからこそ惹かれ、妻にと望んだ。
「アイラ、2人で行けるところまでいこう」
「はい」
いつになく素直に頷くアイラを見たあと、レックスは馬を走らせた。
シグルド達はまだ外で兵達と戦っている中、レックスは一人先にリューベック城へ着いた。
馬を走らせる時、後ろでアイラが呼ぶ声がしたが、それも振りきりひたすら城へと馬を走らせた。
他でもない、自分の育った領地である…地形は熟知しているため、難なく城までたどり着いた。
ーさて、ここからが本番だな。
レックスは馬から降り、城の奥へと歩みを進めた。
敵の大将であるランゴバルト卿…父のいるところへと。
城へ進入した跡、父のいるところまではもっと抵抗があるかと思ったが、そうでもなく、すんなりと行けた。それだけシグルド公子たちが善戦しているんだろう。
そして、城の中庭で父を見つけた。
「きさま・・・レックスだな・・・・・・この裏切り者め!父親に刃向かうとは、恥を知れ!!」
レックスを見てすぐ、ランゴバルトは斧を構えた。・・・スチワンカである。
かつて斧戦士ネールが用いた伝説の武器の1つ。トズル公家の至宝である。
・・・戦いはやっぱり避けられないか。俺も諦めが悪いな・・・
自嘲気味に笑ってレックスも自分の武器を構える。
「スチワンカで手合わせ願えるなら、合い打ちも悪くない・・・」
そう呟いて斧を握る手に力を込める。
一瞬の沈黙の後、父に向かって斧を振り上げた。
キィーン
金属の触れ合う音がしたあと、レックスは吹き飛ばされる。
やはり伝説の武器、それも正当な継承者が扱うのであるから、威力も桁外れに大きい。
「っち!やっぱ並の斧では歯が立たん!」
―ここまでか。・・・アイラ、すまない・・・
「レックス!!」
レックスが死を覚悟した瞬間、ランゴバルトとの間にシグルドが割って入り、鮮やかにランゴバルトを切ってのけた。
・・・彼の手には、同じく伝説の武器・聖剣ティルフィングが光っていた。
「レックス!!!」
「アイラ!!」
何が起こったのか、
シグルドに一歩遅れて入ってきたのはアイラであった。
表情がめったに変わらない彼女であるが、今は蒼白で、今にも泣き出しそうな表情でレックスに駆け寄った。
レックスは泣きじゃくるアイラの肩を抱き、何も言わずに罵倒を受ける。
目映っているのは、アイラではなく、父であった。
剣と斧が対峙すれば、有利なのは剣。それは伝説の武器同士でも変わることは無い。
父は倒れ、息は絶えかかっていた。
「・・・オヤジ・・・」
「ま、まさか・・・このワシが敗れるとはな・・・ダナン、あとは任せた。…レックス、命拾いをしたな…」
いつも威厳の溢れた父はもう何処にもいなかった。
最後にそう皮肉を言い残し、ランゴバルトはこの世を去った。
「…だから嫌だったんだ。オヤジ、これも運命だ・・・許せよ」
そう、レックスは父と戦うのが嫌だったのではなく、父の無様な負け様が見たくなかったのだ。
勇ましかった父、いつも余裕たっぷりで、傲慢だった父。そんな父のイメージを崩されたくなかった。
思えば斧を選んだのも父の影響であった。勇ましく斧を振るう父を幼い頃のレックスは誇らしく思い、憧れだった。
口ではどんに言っていても、心でどんなに嫌いだと思っていても、レックスには実の父である。次男であったが、利発であることを父に誉められて嬉しかったのは真実だった。…反抗ばかりしていたのも、少しでも父にかまって欲しかったのかももしれない。
・・・本当に、今更、だな。
レックスはやりようのない思いをどうすることもできないで、ただ自分に抱きつくアイラを強く抱き締め返した。
・・・これも運命…なのか・・・
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戦いもほぼ終り、リューベクが落ち着いたあと、レックスはシグルドに話しかけられた。
「レックス、今度のことは…」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
話しの内容はわかっていた。シグルドの性格からして、自分に遠慮していることがわかる。
気まずい沈黙が続いた。お互い、顔をあわせることもなく、緊張した時間が過ぎる。
・・・ま、いつまで引きずるのも、アレだしな。
しばし考えた後、レックスはシグルドを見て言った。
「謝ることはない、オヤジもシグルドの父上を死に追いやった。」
「・・・・これからも、供に来てくれるか?」
「愚問だな」
「・・・・・・・・」
シグルドはなんとも言い難い表情をしていた。
しかし、オヤジがシグルドの父親にした事は事実であり、シグルドは父の敵を取っただけだといえばそれまでのことだった。
「気にするな、運命ってやつだ。どうも、オレはまだ死なないらしい」
そう、シグルドを恨んではいない・・・ただ、アイツの敵がオレのオヤジだった、それだけのことだ。
「レックス」
「シグルドが来て、助かったぜ。あのままだと一生アイラに恨まれるところだった」
この話題は終り、というようにレックスは苦笑混じりに言った。
というのも、あのあとアイラに散々恨み事を言われ、それからずっと口を聞いてもらえなくなっていた。
今もそれは継続中である。
しかし、傍を離れることはなく、今も柱越しにこちらをにらんでいる。
・・・(汗)・・・・結果がどうであれ、恨まれるのは同じ・・・かもな。
何とか言ってやってくれ、とばかりにシグルドを見るが、夫婦喧嘩は犬も食わぬという文言のとうり、シグルドは苦笑を浮べるだけであった。
(ドズル・終わり)
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後書き
サイドストーリー。番号としては18
でも書いた順番は、9つ目
またしてもレックスxアイラ。
ま、メインはレックスと父ですが。
レックスとくっつくアイラは可愛いと友人が言うので、可愛いアイラを目指したのですが・・・。
ビミョー。ちなみに、この後アイラは口は聞かないがレックスから目を離すことはなく、半ストーカーっぽい感じでいつもレックスにくっついています。
そんなアイラの反応が可愛くて、レックスもついいろいろ仕掛けて、結局いつの間にか元にもどってる…みたいな展開を希望。←希望って…(笑)
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