グラン暦757年

それは突然のことであった。

クランベル王国・ユングヴィ城が隣国ヴェルダンの王子・ガンドルフにより侵略され、陥落し、クランベル1の美女といわれる、ユングヴィの公女エーディンはその美しさゆえにガンドルフに連れ去らたのである。
ユングヴィ公爵・リング卿、公子アンドレイ並びにその主力部隊バイゲリッターがイザーク遠征のために不在中であり、寝耳に水の出来事であった。








1.聖騎士誕生








ユングヴィが奇襲をかけられたと聞き、隣の領地であるシアルフィでは、公子シグルドが幼馴染であるエーディンを助けるため、立ち上がる事となった。

ユングヴィ同様に主戦力であるグリューンリッターがいないシアルフィであったが、シグルドは立ち上がった。苦戦を強いられる状況であったが、彼は黙って見てはいられなかったのであった。









シグルドが駆けつけたときには既に城はあらされ、エーディン公女の姿はなかった。

城内を探していたシグルドは、エーディンの護衛役を任されていたミデェールを見つけた。ミデェールは気を失って倒れていたが、かろうじて一命は取りとめていた。

「ミデェール!ミデェールじゃないか!!大丈夫か!?エーディンは??」

「…?……え、エーディンさ…ま……」

「しっかりしろ!何があった!?エーディンは何処に??」

深手を負っていた他の兵士やミデェールから、ヴェルダンの一方的な襲撃の後がうかがえた。

「あ…ああ、シグルドさま!??エーディン様がヴェルダンのガンダルフに・・・どうか、どうかエーディン様を!!」

ヴェルダンは蛮族の国といわれ、その第一王子ガンダルフは残忍だというころで有名である。エーディンはその美貌故に彼に目を付けられ連れさらわれてしまったのだ。

「申し訳ございません、私の力不足です。命を捨ててでもお守りするべきでしたのに!」

ミデェールは自分を責めた。エーディンの守護は自分の役目であったにも関わらず、主人は連れ去られ、自分は生きている。しかも恩あるリング卿の留守の時に。

自分の至らなさが悔しくて、もどかしくて、ミデェールは自分を責めるしかなかった。

そんなミデェールにシグルドはエーディン救出を申し出た。

シグルドとしても幼馴染のエーディンが心配だった。

「仕方ないさ、いきなりの襲撃だったのだから、それよりもエーディンを助けよう」

「あ、ありがとうございます!!どうか私もご一緒させてください!!どんなことでもしますから!!」

ミデェールの言葉に、シグルドがその怪我では無理だ、と言おうとした時、いきなり杖が差し出され、魔法の光がミデェールを包んだ。

「「!!!!」」

ミデェールの負った傷がみるみるふさがっていき、不意の出来事に驚いた2人はその光を発した杖の持ち主を見上げた。

「ミデェール、派手にやられたわね。傷はふさがっても痛みはしばらく続くから、無理しちゃ駄目よ?」

その人物はにっこり笑って言った。

「お久しぶり、お兄様。キュアンにお願いして援軍にきたの、私も参加していいでしょう?」

シグルドの妹で、今はレンスター国の王子キュアンの妻となりレンスターへ嫁いだはずのエスリンだった。

「「エスリン(様)!?」」

驚きの声を上げた2人の背後に、1つの影が近づいた。

「久しいな、シグルド。苦戦しているようだが、私も参戦しよう」

「キュアン!!」

シグルドの2人の親友の1人、レンスターの王子・キュアンであった。イザークへ侵攻しているため、戦力に欠いているときにヴェルダンの侵略報告を受け、困ったときはお互いに手を貸すというシグルドとの約束を守るために妻エスリンと、家臣フィンを連れて駆けつけたのだった。

「俺達も手を貸すぜ。」

さらに後ろから声がしたので振り返ると、トズル公子レックスと、ヴェルドマー公子アゼルがいた。同じ国のエーディン公女が襲撃を受けたという知らせを聞き、駆けつけたのである。

「皆様……あ、ありがとうございます、このご恩は一生忘れません」

かくして、エーディン奪回のために集まった者はシアルフィ公子シグルドとその部下アレク・ノイッシュ・アーダン、トズル公子レックス、ヴェルドマー公子アゼル、レンスター王子キュアン、その妻エスリンと騎士見習いフィンであった。

ミデェールは自分の力の無さを悔しく思いながらも、頼もしい味方を見、エーディン救出を心に誓った。

自分をせめているばかりでは何もはじまらない。

エーディン様を助け出すことが今1番すべきことだ、という思いが彼を動かしていた。

―たとえ、どんなことがあっても、エーディン様、貴女様はお助けします。そのためなら、命もいりません―

そう思う彼の目には、後悔の色ではなく、救出を誓う決意の色があった。








「さぁ、行こうか。戦況は良いとは言いがたいが、これだけの協力があれば、エンバスまではすぐだろう。」

シグルドはそう言って皆を促した。
















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必死の攻防の末、クランベルとヴェルダンの国境にあるエンバス城を制圧したシグルド達であったが、そこでエーディンの姿を見ることはなかった。

既にヴェルダンへと連れ去られた後であったのだ。

悔やむシグルド達の下へ、クランベル国王、アズムールから書状が届いた。ヴェルダンへの侵略を許可するという旨の書状であった。

他国に侵攻することは、たとえどんな理由があっても勝手にしてよいことではない。しかし、国王からの許しが出たことから、エーディンを救うべくヴェルダンへと進軍することができるようになった。。

シグルドはヴェルダンの侵略を退けた功績から、国王より銀の剣を賜り
―――同時に、シグルドはクランベル王国聖騎士に任ぜられた。

ここに1人の聖騎士が誕生したのである。







―――
この戦いが後に起こる様々な出来事の発端となることはまだ誰にも予想ができなかった。


そう、全てはシグルドがヴェルダンへ侵攻したことから起こったのである。









(聖騎士誕生・終わり)






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後書き

一発目。どうでしたでしょうか?

戦いのきっかけ。という感じで受け止めてもらえるとうれしいです。

…ちょっとミデェールメインっぽかったかな(汗)
スミマセン…私ミデェール好きなんですー。





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