■小さな恋と応援団■



「嫌です。」

それは、よく通る声だった。

フィンは主君であるキュアンの部屋へ向かう途中だった。
平和だなぁ、と思いながら歩いていると、凛とした声が聞こえたのだ。

驚いて声が聞こえてきた方向の扉を見る。


そこは、ノディオンの王女ラケシスの部屋


フィンが足を止めると、いきなりその扉は開かれた。


ドン!!という音とともに、出てきたのはその部屋の主と思われる人物。

よほど気が立っていたのか、彼女はフィンに気づかずに去っていった。
その横顔はチラッとしか見られなかったが、瞳に宿る強い光が印象的な女性だった。





フィンは彼女と面識は無かった。
知っていることは、エルトシャンをとても敬愛しているということのみ。

大切に育てられ、戦いなど知らない王女様だと思っていた。


なので、当然部屋から聞こえた声に耳を疑い、今見た現実に目を疑った。



「・・・・・・・・・・・あれが、ラケシス王女・・・・・」


慌ててラケシスを追いかけるノディオンのクロスナイツたちを見送りながら、フィンはポツリと呟いた。

年も自分とそう変わらない少女に、フィンは目を奪われてしまった。
誰もが目を向けざるを得ない存在。惹き付けられずにはいられない存在であった。






















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「遅いな」

所変わって、こちらはフィンの主、キュアンの部屋。
エスリンの夫キュアンは痺れを切らしていた。

というのも、部下であるフィンがいつまで経ってもやってこなからである。

いつもなら忠犬よろしくすぐにやってくる彼であったが、今日はいつもの時間を過ぎているのにまだこない。

フィンを可愛がっているキュアンとしては、心配なのである。


「キュアン、お茶を入れたわ。少し落ち着いたら?」

エスリンはそう言って紅茶を差し出す。

フィンを心配する夫の様子がどこか微笑ましく思え、自然と顔には笑みがこぼれている。


「しかし、生真面目なフィンが時間に遅れるとは、何かあったのかな?」

「さぁ、フィンにだって、たまには寝坊とかあるんじゃないのかしら?」

「ここのところ戦いが続いたからな、疲れているんだろうか」

「そうね・・・・」


と、レンスター夫妻がお茶を片手に、どこかおっとりした口調で話しているとき、扉からノックが聞こえた。












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「キュアン様、遅れて申し訳ございません!!」

ノックの後飛び込んできたのは、話題の人物フィンであった。
肩で息をしている様子から、ここまで走ってきたようだった。


常にきっちりした彼の慌てた姿を見て、キュアンはフィンの年相応の姿に笑みをこぼした。

「そう慌てることはないぞ、フィン。最近は戦いも続いて疲れているだろう」

「いっいえ、そんなことはありません!!今朝は、ただ・・・・」

主の言葉に、フィンは思いっきり顔を振って否定した。

そして、今朝の出来事を言いかけ、すこし顔が赤くなったように見えた。


「今朝、何かあったのか?」

そんなフィンの様子が気になって、キュアンは訊ねる
彼とて、フィンが可愛いわけで、何かあったら助けてやろうと思うのは自然な気持ちであり、彼の優しさなのである。

「それが・・・、その・・・」

訊ねられたフィンは、言いにくそうに今朝の出来事を話した。

ラケシスの部屋の前で聞こえた声のこと。
いきなり扉が開いて出てきた少女の気高さに圧倒されたこと。
そのまま見ほれて、立ち尽くしてしまったこと。

などであった。



「そうか、ラケシスに会ったのか」

なるほどな、とキュアンは思った。

「い、いいえ、お会いしたというか、すれ違いに横顔を拝見しただけなのですが…その印象が思っていたものとは違っていて…」

「印象?」

「はい、ノディオンの王女はもっとおっとりとした方だと思っていました」

「そうか。で、見てどう思ったんだ?」

「ええ、惹きつけられて、目が離せないというか。そこにいるだけで存在が無視できないような方でした」


さらに顔を赤くしてしまうフィンを見て、キュアンは思った。

この生真面目な部下は、ラケシスに惹かれているのだと。



『…可愛い部下の為だしな。ここは私が一肌脱ぐか…』

にやりと笑みを浮かべてそう思うキュアン。

フィンは自分のことでいっぱいいっぱいである様子で、そのことには気づいていないようであった。

しかし、ここには2人だけでなく、もう1人いる。

エスリンだ。



彼女は夫の顔を見逃してはいなかった。

彼女は勘がいい。

キュアンに目線で合図を送ると、自分も一肌脱ぐという意味をこめて笑みを送った。



こうしてレンスター夫妻によって『フィンの恋応援団』が結成されたのである。

―当のフィンは気づかないままに。





彼らの活動によって、フィンとラケシスとの距離は徐々に縮まっていくのであった。


















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あとがき

2222HIT記念の小説です。

フィンの恋のきっかけは?というお話です。
ラケシスはこの時点では出てきてなくてごめんなさーい。
そして短いですね。

続きも考えてるんですけど、今はここまでで。


感想・ご意見がありましたら、こちらまで。
誤字・脱字などもありましたら指摘頂けると助かります。


2005.4.3