■一時の平和■
「シャナンさまぁ〜、何処にいるんですかー??」
パタパタと軽快な足音を響かせて、叫ぶのはパティ。
…きた…
シャナンはその声を聞いて、諦めたような溜息を漏らした。
解放軍と合流して数日、毎日のようにやってくる彼女から逃げるのは彼の日課となっていた。
(・・・・・・・・何故にこんなことになったのか・・・・・)
稽古をしていた手を止め、愛剣を鞘に納めると、素早く建物の影に身をひそめる。
勿論、気配を消すなど朝飯前で、彼女が立ち去るのを黙って待つことにした。
が、逃げたところでパティは諦めたりはしない。
自称"恋する乙女”はささいな事ではくじけたりしないのである。
「あれー?確かにここで剣の稽古をしているって聞いたのに・・・」
?マークを飛ばしながら首をかしげるパティ。
少し考えた後、
「きっと何処かで休憩しているのよね!?」
うん、そうに違いない!と、明るく笑って再び走りだした。
目的は、当然シャナンであろう。
「シャナンさまぁ〜〜!!何処にいらっしゃるんですかー??」
どうやら『挫ける』という単語はパティの中には存在しないらしい。
シャナンが建物の影に身を隠していることも知らず、
賑やかに現れた少女は、嵐のごとく駆けて行った。
「・・・・・・・・・・・行ったか・・・」
パティが走り去ったのを見届けて、溜息を漏らすシャナン。
「いつもながらに、元気ですねぇ」
がっくりと肩を落した彼に、後ろから感嘆の声がかかった。
「・・・・・スカサハ、お前はどっちの味方なんだ?」
本日何度目かの盛大な溜息をつきながら、シャナンはその人物を振り返った。
いつの間にであろうか、後ろに立っていた従兄弟のスカサハは、笑っていた。
スカサハとしては、いつもの顔だったのだが、シャナンには人の不幸を楽しんでいるように見えて仕方なかった。
「味方って・・・・。」
そんな人聞きの悪い・・・と苦笑しながらシャナンを見る。
「お前、楽しんでいるだろう?」
「ですがシャナン様、まんざらでも無いでしょう?」
ギラリと睨んで、威嚇してはみたものの、スカサハはひらりとかわした。
「・・・・・・そんな訳なんだろう?相手は子どもだぞ!」
年が離れすぎている、とシャナンは思う。
第一、シャナンはこれまでセリスを守る事に命をかけてきたのだ。
色恋沙汰に関わっているヒマはなかった。
そんなことは二の次である。
解放軍を組織するほどに、セリスは立派になったが、シャナンにとってはまだまだ子ども。
アルヴィスを倒すまでは、セリスを守る義務がある。
・・・・・・・・あの人の忘れ形見であるセリスを。
「シャナン様?」
考え込んでいたシャナンを不信に思ったスカサハは呼びかけた。
「ん?」
「いえ、何か考え込んでいたようですが・・・」
「いや、何でもない。」
「信用できませんね。いつもシャナン様は一人で抱え込もうとするでしょう?
俺たちだって、もう子どもじゃないんです!少しくらいは頼りにしてください」
何でもない、と簡単にすまそうとするシャナンを見て、スカサハはムキになって抗議をした。
「・・・・ふっ」
シャナンは心配そうに自分を見るスカサハの姿がおかしくて、つい笑ってしまった。
「何がおかしいんですか!」
スカサハは、真剣にきいてます?とつめよった。
その様子がおかしくて、つい声を立てて笑ってしまう。
「いや、すまん。お前に心配される日が来るとはな。」
シャナンは、込み上げてくる笑いを抑えようとしても収まらなかった。
「はぁ、そんなに笑ってると、気付かれますよ、彼女に。」
そう言って、スカサハは笑っているシャナンをニヤリとした表情でみた。
当然、いつも子ども扱いしたお返しという意味を込めてである。
「明るくて良い子だと思いますよ。シャナン様とお似合いです」
にっこり笑ってそう告げるスカサハ。
彼は嘘は言っていない。本当にそう思っている、といった顔だった。
「・・・・・・・・・・・・・・スカサハ。」
「何ですか?」
「・・・・・・・どこをどう見てそう言えるんだ・・・」
「別に、見たまんまですが」
「・・・・・・・・・・・・・・・言って良い冗談と悪い冗談があるのは知ってるか?」
「心得ているつもりです」
しれっとした顔でなんなく切りかえすスカサハ。
対するシャナンは、溜息を隠せないでいた。
(何処をどう見てそういう発想に行きつくんだか・・・・全く)
顔を引きつらせて、否定しようとした瞬間
「シャナンさまぁ〜!」
自分を探す声が聞こえた。
―確認するまでも無く、パティだ。
明るい声が耳に入った瞬間、シャナンはビクッと反応する。
「あ、パティ戻ってきたみたいですね。シャナン様も、お昼くらい一緒に取ってあげてはどうですか?あんなに一生懸命じゃないですか。」
「馬鹿を言うな、この間作ってきたという弁当を食べて、酷い目にあったぞ」
シャナンは焦ってそう言った。
こうして会話している間にも、彼女の声は近づいてくるのがわかる。
「観念した方がいいと思いますけどね」
従兄弟のそんな様子をみたスカサハは、苦笑をしながらそう零した。
「人事だと思って、勝手なことを言うな」
それだけ言うと、シャナンはスカサハを置いて立ち去った。
やはり、逃げるらしい。
スカサハ面白そうに彼らを見守ることにした。
シャナンを見つけて駆け出す彼女を見てスカサハは思った。
いつも生真面目な彼にこんな一面を見れるのは、追いかける相手がパティだからかもしれない、と。
「ホントに、お似合いだと思うんだけどな」
シャナン様に聞かれたら、鬼神のような形相で睨まれるだろうな、と思いながらそう呟いた。
連日の戦いが一息ついたとある日の出来事であった。
<一時の平和・終>
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一時の平和
スカサハから見た、シャナンとパティの攻防戦です。
セリス軍で平和っていうと、真っ先にパティちゃんが思い浮かびます。
私のイメージでは一番戦いから遠いかんじ。
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