気持ちの行方






3.それぞれの思い




ティニーはふらふらとアルスターの南にある森へと足を運んだ。1人になりたい時、幾度となく訪れた森である。

少し奥に入っていくと、小さな湖がある。ティニーのお気に入りの場所で、幼い頃から泣きたくなったときにここへ来て泣いていた。

お兄様と会ってからはここへも来ていなかったな、と思いながらティニーは湖を見眺めた後、目を瞑って幼い頃のことを思い返した。











『僕はリーフ、君は?』


『ティニー、と言います』













幼い頃にであった男の子。彼はリーフと名乗り不思議な感じのする子だった。

母と会うことが許されず、叔父・叔母には嫌われ、唯一構ってくれるイシュトー・イシュタルとはたまにしか会えない、そんなティニーにはじめてできた友達であった。

2ヶ月ほどのことであったが、ティニーにとってはとても大切な友人との想い出であった。




力を貸してください。貴方と同じ名前のリーフ様と仲良くなるにはどうすればよいのでしょう?






ティニーの目からは自然に涙が零れた。あの男の子がリーフ王子だったら、フリージとの問題を受け止めてくれるかもしれないと思ったことが無いことはない。いや、微かにそうであったらよい、と思っていたのかもしれない。自分の勝手な思い込みだったと思いひどく落ち込んでしまった。



…リーフ様が怒っていらっしゃるのも無理はないですね。私が勝手に思い込んでいたのですから…

そう思うとティニーは立ち去ろうとした。レンスターとフリージの関係を友好的なものにしたいと心に決めた以上、もうここで泣くのも最後にしなくてはと思った。

「私は自分にできることをしなくては・・・」

そうしていると、足音が聞こえてきた。ティニーは泣き顔を見られるのを躊躇って木の陰に移動した。











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リーフはフラッとアルスターの近くの森に出かけた。以前逃げていたときに一時期過ごした森に似ていた。
少し歩くと小さな湖があった。リーフはそこに寝転がり、ぼんやり空を見上げながらそう呟いた。
「ティニー…か…」
「ティニーがどうかしたのかい?」
突然後ろから声が聞こえて慌てて振り返ったリーフの目にはセリスが映った。
「いえ別に、なんでもないですよ。それよりどうしたんですか?こんなところにお一人でなんて」
「う〜ん、別に。ただフラッとね。リーフ王子、隣いいかい?」
尋ねたリーフに笑い返したセリスはリーフの隣に座った。
「セリス様…最近の私は焦っているのでしょうか?レンスターの人々は私に良くしてくれて、でも自分はできることが少なくて。私が至らないから…」
「解るよ、その気持ちは。私もそうだったからね。でも今は自分の力を信じることだよ、リーフ王子。」
悩むリーフにセリスはそう言った。それから2人は取り留めの無い話をし、笑いあった。その様子はかつての2人の父親達のようにであった…。
「あ…あの…セリス様、昨日はすみませんでした。あんな態度とるべきではなかったのに…私は」
「リーフ王子、それは私じゃなくてティニーに言うべきだと思うよ。ティニーも私から聞くより君から聞いた方が喜ぶと思うしね。それと、昨日は部屋で何か考えてたようだけど、何だったんだい?」
セリスは困ったように笑ってそういった。
「いえ、大したことではないんです。ここの辺りでちょっとした思い出があって…」
「そうか、リーフ王子はこの辺にも来たことがあるんだね」
「ええ、初めてできた友達がいたんです。王子ではなくて、リーフとしての」
ぽつぽつと、懐かしそうにリーフ。セリスは黙って聞いていた。
「森で会って…一緒に遊んでいたんです。でも帝国に見つかりそうになったから急に逃げることになって、その子とはそれっきりになっちゃって…サヨナラも言えなかった」
切なそうに湖を見るリーフを見て、セリスは口を開いた。
「ひょっとして、ティニーっていう名前だった?」
「どうして……。」
リーフが幼い頃に出会った女の子、彼女は銀髪に赤いリボンでティニーと名乗った。
「う〜ん、なんとなく…ね。昨日君がティニーの名前に反応してたのと、ティニーの様子も気になってたし。」
「銀髪でティニーと名乗ったあの子は、恐らくティニー公女なんでしょうね。…彼女が憶えているかどうかはわかりませんが。銀色の髪の人はこの変にはいないから」

遠くを見ながらリーフは話を続けた。その隣でセリスはただ黙って聞いていた。


「セリス様…私は王子として国を守らなくてはなりません。また復興途中ですし。皆が私に良くしてくれるのは、私が王子だからです。決して私自信に対してじゃないことくらい解ってまいます。私は、自分の力がもっとあればと望まずにはいられないのです」

「ティニーが嫌いなのではない…と思うんです。あの時はとても楽しかったし。でも私はレンスターの王子なんです。フリージを憎まずにはいられない。今は…今はまだ友好関係なんて考えることはできません。だから今ティニーと仲良くしたらフリージを許すことになってしまう…」

情けないですね、と言うリーフに対してセリスは笑いながら言う。


「私もね、前は敵対していた人を憎んでいたよ、仲良くなんか出来ないと。でもね、レヴィンから憎むだけではだめだ、と言われた。それではロプト教と同じだってね」

「私もそうだよ。もっと力が欲しい。人間ってそんなに簡単なものじゃないから、気持ちに矛盾があるのは仕方ないよ。」




「…はい。ありがとうございます」

「いえいえ、これでも解放軍のリーダーですから。仲間の気持ちを解ってこそのリーダーでしょ?それに、言ってたよね?公女には民が助けられたって。ここでいう公女ってティニーじゃない?ねぇ、居るんでしょ、ティニー?」」

にっこり笑ったセリスが振り返ったのは、大きな木であった。

まさか!?とリーフが振り向くと、目を真っ赤にしたティニーが申し訳なさそうに出てきた。




「…ティニー…」
「…ごっごめんなさい。…私…立ち聞きするつもりじゃなくて、…あの、その…でも…リーフ様、ごめんなさい!!」
それだけ言うと少女は走り去っていった。木の陰にいたティニーは動くことができなくて、結果的にセリスとリーフの会話を聞いてしまったのである。
「「ティニー!!」」
2人は同時に叫んだが、行動を起こしたのはリーフだった。









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「ティニー、ティニー待って!!」

ティニーは振り返らずに走ったが、やはり男女の体力には差があって、すぐにティニーはリーフに捕まった。

「ティニー、私の話を聞いて」

ティニーは振り返らずに無言で立ち止まった。

「ごめん、君が悪いわけじゃないのに、君を嫌ってるわけじゃないのに、私は…まだふっ切れなくて…まだ時間がかかるかもしれないけど…」
そこまで言って、リーフは言葉に詰まった。そんなリーフを振り返ってティニーは言った。
「リーフ様…それだけで十分です。」



















それから沈黙をやぶる言葉は同時に出た。。
「あ、あのさ、さっきの話、私が森で会った女の子ってティニーだよね?」
「あの…あの時の男の子ってリーフ様だったのですか?」


2人とも俯いて、再び顔を合わせて笑った。

後日談であるが、ティニーは名前を憶えていたけれど、茶髪の人はこの辺りでは珍しくないので、王子であるとは思わなかったということである。











「それとね、ティニー。ずっと謝らなきゃと思ってたんだけど、あの時サヨナラをいえなくてごめん」
「いいえ、私の方こそ…ごめんなさい。先に約束を破ったのは私の方ですから」













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後日・解放軍の駐屯地にて

「まったく、リーフ王子にも世話が焼けるね。無理して背伸びすることなんかないのに。」

セリスは苦笑しながら呟いた。リーフとティニーはあの後一緒にいるところを何度か目撃したので上手くいったようである。

「でも、そこがリーフ様の良いところなんです」

そういって微笑むのはナンナ。

「そうだね、ま私としては二人が双方の橋渡しとなったらいいなと思ってるんだけど、ナンナはそれでいいの?」

「いいんです、私は『妹』でしかなかったから。一緒にいた分、解っていたんです。リーフ様は誰か他の人を見ていることを。これからが大変ですね、フィン様なんて難しい顔してますもの」

少し寂しそうに笑ってそう言ったナンナの物語はまた別に存在する。





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懺悔

ごめんなさいこめんなさいごめんなさい。後編が無駄に長い…。これでも削ったんです。

リーフ様は苦しみを乗り越えて強くなるんです。時には背伸びをしちゃってもいいじゃないですか。

…念のために言っておきますが、この時点で2人はまだ恋人ではありません。仲は良いですが、兄アーサーを筆頭に敵は多いんです。だって、まだ再会したばかりなんですから(笑)

…でも決して2人をいじめたかったわけではないんですぅ。幸せになって欲しいとおもってますよ?ただ、書いていたらこんな風に…

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