■恋のはじまり(4)■
朝食を終えたティニーは、アーサーと共に食堂を出た。
二人はそのままそれぞれの自室に戻る。
アーサーはこれからリーフとの特訓へ、そしてティニーは連日の戦で傷ついた人々の手当てを行うことになっている。
解放軍は、打倒アルヴィス皇帝を掲げているが、単に戦い進み続けるだけではない。
行く先々で人々に歓迎を受けるのは、傷ついた人々への手当てを行い、壊された町の復興を助けつつ進んでいるからだ。
ということで、当然ティニーにも連日怪我人の手当てという仕事が待っている。
・・・本当はシスターでもないティニーがその任務に当たるのは、怪我人の数がシスターだけでは間に合わないほど多いということだ。
そうなると、必然的に杖を使える者はその任務に当てられる訳である。
なので、マージである彼女も協力を要請されることになったのだ。
―もっともティニーは、自ら進んで志願しているのだったが。
何はともあれ、盟主であるセリスが先頭に立って復興に力を注ぐため、それに感化される仲間たちは自発的に行動を起こすわけで。
いつの間にかそれが日々の仕事化してしまった、というのが正しいのであるが・・・。
とにかく、聖戦士の血を引く解放軍の主要メンバーといっても、やる事は一般の兵達と変わらなかったりするのである。
今日のティニーの担当は、マンスターの城下町での枝東側の住人の怪我の手当てであった。
回復系の魔法は、集中力を要する。
故に使い手たちは真剣そのものだ。
もちろん、ティニーも例外ではない。
だから、気付かなかった。
―いつの間にか隣にいたのがナンナだったことに。
ナンナに気付いたのは、本日何人手当てしたのかもわからないほどになったころ。
ふーっと一息入れて隣に視線をやると、同じくこちらに視線を向けていた彼女と目が合った。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
気まずい無言の瞬間だった。
お互いに、苦笑を浮かべると、次の怪我人へと取り掛かる。
そしてそのまま言葉を交わさぬうちに、日は傾き、城へと引き上げることになった。
「ねぇ、ティニー」
帰って杖の手入れでもしようか、と思いながら歩いていたティニーに、後ろから声がかけられた。
聞き覚えのある声・・・そう感じで振り返ると、金髪の少女がティニーを見つめていた。
「ナンナさん・・・」
間違うはずも無い、輝くほどの金髪に凛とした碧眼が印象的な少女―ナンナであった。
彼女は、「一緒に城まで帰らない?」と普通に声をかけてきた。
ティニーは驚いて、目を見開く。ナンナと普通に会話する機会は今までに無かった。
それ故、彼女のことは何も知らないに等しい。
『何か、あったんだのすぁようか・・・ナンナさんが私に話しかけてくるなんて・・・』
そう言いたげなティニーの表情を悟ってか、ナンナは軽く苦笑する。
「そう構えなくてもいいわよ。ただ、貴女と話してみたかったの」
そう言ったナンナの表情からは悪意は見られなかった。
何か言いたいことがあるんだろうか、そう思わずに居られないティニーに対して、ナンナはニコリと笑みを浮かべて言葉を綴る。
話すことは
「今日も疲れたわね。」
「ええ、大分落ち着いてきたみたいですけど」
「そうね、近々ここも出発するみたいだし」
「え?」
「あら?聞いていなかったの?てっきり貴女のお兄さんに聞いているものだと思っていたわ。」
「・・・・・・」
「近々発つみたい。まだリーフ様は迷っているみたいだけれど」
「
「皆も聞いているだろうが、町の復興もそこそこだし、そろそろトラキアへ向けて出発しようと思う」
その日、それぞれの仕事を終えた皆を広間に集めたセリスはそう言った。
それに続く内容は、トラキアは険しい山々に囲まれているため、これからは厳しい進軍になるだろうと予想されるから皆覚悟をしておおくように、ということだった。
『・・・マンスターを離れる』
ティニーには、初めて聞かされることだった。
いや、もしかしたらアーサーがそんなことを言っていたかも知れない。
でも、ティニーは聞き逃してしまっていたのだろうr。
ここマンスターは、ティニーにとって育った土地を眺められる最後の場所だった。
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あとがき
リーフの出番が…。
ティニーちゃんはやっと恋に気づきました。
さて、これから一波乱起こす予定です。
…てか、ナンナのイメージ変わってきてるよ!?
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2005.0411