■恋のはじまり■






翌朝、ティニーは散歩にでた。

いつものように、風は涼しくて気持ちいい。
普段なら、自然と鼻歌を歌っている彼女だったが、何故だか今日は浮かない顔色だった。

どうしてなのか、彼女にはわからない。
ただ、昨日のリーフとナンナの様子が頭に浮かんで離れなかった。


ふと気がつくと、あのテラスに続く廊下を歩いていた。
解放軍がマンスター城に留まって半月、日課となったのはリーフとの朝の語らいだった。

「・・・・・・・・・・はぁ。」

ため息をひとつ漏らすと、ティニーはくるりと方向を変えて歩き出した。

朝、リーフと会うのは楽しみだったけれど、今日は気が重い。

「今日は、気分を変えて庭に出てみようかしら」

浮かない顔をしてたら、アーサーが心配する、ティニーはそう思った



























「ティニー!おはよう。」

「お兄様、おはようございます」


散歩から帰る途中、後ろから明るい声がかけられた。
振り返ると、にこにこと笑顔を浮かべる兄がいた。

同じように、笑みを浮かべてティニーも返す。

「浮かない顔をしてたな、何かあったのか?」

ティニーが俯いて歩いていたのを見ていたアーサーは、作り笑顔のティニーを見てそう問うた。

「え?・・・・・いいえ、何もないですよ?」

「そうか?まさか、誰かに何か言われたのか?」

いつもそうだ、この兄はティニーをとても心配してくれる。
周りから、兄馬鹿といわれようが、シスコンといわれようが、過保護を辞めるつもりはないらしい。

「ちっ違います。皆さん、とても親切にしてくれます。」

焦ってそう答える。
いつだったか、ティニーに言いがかりをつけた男を目撃したとき、アーサーは鬼人の如く怒り、フォルセティまで持ち出そうとしたのは記憶に新しい。

そのとき、ティニーは悟ったのだ。この兄は妹に敵意を向けるものに対して容赦という言葉を持ち合わせていないのだ、ということを。

めったなことを言ったものなら、一大事になってしまう。





「そうか?」

う〜んと釈然としないアーサー。
が、ティニーがにっこりと笑って

「はい、本当によくしてもらって、もったいないくらいです」

というので、引き下がらざるを得なくなった。

「そうか、ならよかった」

「はい」

ティニーは、アーサーが食い下がらないのを見て安心した。

『お兄様ったら、心配性なんだから』

と思いながらも、そこまで心配してくれる兄がいることが嬉しかった。











「ところで、ティニー、昨日の夕方どこかにいった?」

2人並んで、食堂へ行くことになったのだが、その途中、アーサーから突然昨日のことを聞かれた。

「え?」

ティニーは、本日2度目の焦りを感じた。
昨日の夕方…つまりライブの杖を握り締めて部屋を飛び出したことであろう。

確か、アーサーは疲れて部屋に帰った後ではなかったか?

『ええ?どうしてお兄様が知っているのですか?』

とっさにそう思った。
その疑問が顔に出てしまったのであろう、アーサーは妹の表情を見て、その疑問に答えた。

「いや、ティニーが物凄く急いで部屋から出て行ったのをフィーが見たって言ってたから、何かあったのかなと思って」


そう、ティニーが急いでリーフのところへ向かうのを、フィーが目撃していたのであった。
普段、滅多に走らない、また走るというイメージそのものがないティニーが焦っていた、という珍しい様子を目撃したフィーが、ティニー命のアーサーに報告していたのだ。

「あ・・・・・・いえ、何にも無かったです。ちょっと気になることがあって」

リーフのところへ行った、とそう言えばアーサーの機嫌は自然と悪くなる。
ティニーとて、兄の顔を曇らせたくは無いわけで、口調をにごらせて、そう答えた。





『何かあったわけじゃないもの。・・・・・・・・・・・・ただ、気になるだけなのは本当。』


―そう、リーフのことが。

胸に感じる痛みはどうしてなのか、ティニーにはわからない。
けれど、彼のことを思うと起こるこの痛み・・・・


『私、どうしたのかしら・・・・・・・・・』




困ったような顔で、そのことは聞かないで〜というオーラを発しながら、上目遣いでアーサーを見上げるティニー。
その姿は、花のように可愛らしく、普通の男ならほぼころりと丸め込まれるであろう。
まして、妹命、この世にティニーほどの宝は無いと豪語するアーサーに対してである。
効果が無いわけが無い。いや、通常の10倍ほどの効果は軽くあるだろう。







「そっか」

とあっさり丸め込まれる。

「はい」

この話題はもうおしまい、といったとき、食堂に着いた。

























マンスター城には、食堂があった。
解放軍のメンバーは、自室で朝食を取るものと、食堂まで出向くものがいた。
ティニーはというと、後者である。

というのも、兄が毎朝誘いに来るからである。
まぁ、他の仲間たちも食堂で取る人が多いので、仲間たちとの会話と楽しむという意味でも、ティニーは食堂で取るのも好きだったのではあるのだが。

「あー、いつもながらに混んでるな。」

「そうですね、席は空いているでしょうか?」

う〜ん、首をひねるティニー。
丁度朝食時とあって、食堂はいっぱいだ。
こういうときが、アーサーの腕の見せ所である。妹と離されてなるものか、と席を探し出した。



「お、空席はっけーん!」

混み合った室内ではあったが、苦労することなく2つ並んだ空席を見つけたアーサーは、ティニーの手を引いてその席に向かった。


満面の笑みを浮かべたアーサーを少し恥ずかしいな、と思うティニー。


長く離れていた兄である。彼女だって一緒にいるのが嬉しくないはずが無い。
兄と話をするのは好きだし、過保護すぎるところがあるけれど、それも彼の愛情だと思えば、自然と許してしまっている自分が居る。

結局は、「お兄様ったら!」と思いつつもアーサーのペースに乗せられているのである。
















「よかったな、2つ席が空いてて。」

笑ってそういう上機嫌なアーサーの隣で、ティニーはそうですね、と頷く。

お互いにひっこり微笑んで席に着く。



そして前を向いたときに・・・・・・・・・


向かいに居たのは、リーフだった。














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あとがき

お決まりな展開。
ティニーちゃんはまだ自分の恋心に気づいていません。
ここでの彼女は天然で、恋に対して鈍感という設定でお願いします。

今回はここまで。
次回いよいよリーフ登場です★



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2005.0411
2005.0915加筆