『偶然の奇跡』



あれは私が5歳くらいのときだった。私…いや、僕はレンスターからの逃亡中でマンスター地方に立ち寄っていた。
僕は普段めったに人のいるところには行かなかった。見つかってしまっては大変だ、と言うのがフィンの口癖だった。
人と会うのは最小限であり、他の人と話す・遊ぶということは無かった。

でも、あの時は確かに聴こえたんだ。誰かの泣き声が。






「ねぇ、フィン何か聞こえない?」

森の奥で誰かが泣いている気がした。

「何も聞こえませんよ、リーフ様。さあ、外は危険ですから早く中へ入りましょう。」

フィンはそう言ったけれども僕は無性に気になってしかたがなかった。でも、逃亡中の僕達はフリージ兵に見つかるわけにはいかなかったので、そのまま小さな古い小屋に入った。僕にはまだ自分を守る力もなかったからフィンの言葉に従うしかなかった。

僕達は生きなければならなかった。亡き父王のために、とフィンからいつも聞いていた。僕達は人目を避けるため父の代からレンスターに使えていたフィンと、先の戦いで父上たちと共に戦ったラケシス様の娘・ナンナの3人で逃げてきた。

翌日また昨日の声が聞こえた気がした。

ちょうど昼前でフィンは出かけていた。しめた!とばかりに僕は抜け出した。こんなチャンスはめったに無い。僕の中で、自分の安全よりも好奇心が勝った。


林を走って抜けると、小さな池があるちょっとした平地に出た。きれいな場所だった。

「だ…誰ですか?」

景色に見とれていると、怯えたような声が突然僕の背後からした。しまった、と思った。僕は逃亡中の身で危険だから知らない人には姿を見せちゃいけないってフィンからきつく言われていたのに。

「あ…あの」

なおも途惑った感じでその声の人物は話しかけてきた。僕は覚悟を決めて振り返ってみると同い年くらいの銀髪で赤いリボンをしている女の子だった。目には涙をいっぱいに溜めていた。

「僕はリーフ、君は?」

怯えたような戸惑ったような様子だったから怖がらせちゃいけないと思って笑って言った。女の子だったから、僕も少し安心して、つい名前を言ってしまった。

「私は…ティニー、と言います。」

女の子はティニーと名乗った。












―これが僕とティニーの出会いだった。ティニーは近くに住んでいるらしく、散歩に来ていたらしかった。

僕達は友達になった。祖国を出てから初めて出あった友達。僕を『王子』としてでなく『リーフ』として見てくれたのがとても嬉しかった。話をしていて、昨日聞こえた泣き声はティニーのものだったらしいとわかった。なんでも『お母様』が遠くに行ってしまって泣いていたらしかった。…僕に『お母様』の記憶は無い。気が付くといらっしゃらなかったから。『お母様』の記憶があるティニーが少し羨ましかった。気が付くと夕暮れ近くまで僕達は遊んでいた。

「ねぇ、明日も来る?」

僕はティニーに聞くと彼女は笑ってうなずいた。そして僕達はまた明日、といって別れた。








「ただいまぁ〜。フィン、怒っている??」

小屋に帰えり、僕はナンナに尋ねた。ナンナは何も言わなかったがその場の雰囲気だけでフィンの怒りは伝わってきた。

「怒っていますよ?リーフ様、何処へ行かれてたんですか!!出てはいけませんとあれほど申し上げたでしょう。リーフ様に何かあったら私は…」

ものすごい形相で怒ってやってきたフィンは延々と僕にお説教をし始めた。隣にいたナンナはくすくすと笑っていた。

「ナンナ様も笑っていないで、お一人でどこかへ行ってはいけませんよ。」

とばっちりを受けたナンナは「はぁい」と返事をした。

「で、リーフ様は何処へ行かれていたのですか?まさか誰かに見つかってはいませんよね?」

「別に、たまには散歩もしたいし、ちょっと出歩いただけだよ。」

フィンはなおも続けた。このまま正直に言うとかなり怒られそうだったので僕はティニーのことは内緒にすることにした。

「でもリーフ様何かいいことあったでしょう?楽しそうですよ。」

ナンナはこういうことには鋭い。気づかれまいとするのに一苦労だった。ナンナに何とかごまかしてその日は早々と眠ることにした。が、内心は初めての『友達』に会えたことがとても嬉しくて明日が待ち遠しくなかなか眠れなかった。









―それから何日か、僕はフィンの目を盗んではティニーに会いに行った。ティニーはマンスター周辺のことに詳しくて、美味しい木の実やきれいな花のあるところなどを教えてくれた。そしてまた明日、といって帰った。






ティニーと会って2週間ほど経った日、いつものように僕は待っていた、けれどティニーは来なかった。その次ぎの日も彼女は来なかった。仕方ないのでトボトボ帰ると、フィンが荷造りをしていた。

「リーフ様、明日ここよりもっと南の方に行くのですって。」

ナンナからそう聞いた。僕達のことがどこかで噂になっているそうで、ここは危ないからとフィンが説明してくれた。そして僕も荷造りを手伝った。

―翌朝早く僕らはマンスターを発った。ティニーにさよならを言えなかったことが悲しかったけれど、フィンに言っても絶対に行かせてくれないだろうし叱られるのは嫌だったので、気になったけど何もしなかった。ティニーは今日は来ているんだろうか、とそればかり気になっていた。

多分もう会えないんだろう、と思った。ティニーのことはずっと心に引っかた。













―あれから10年か、いろいろあって僕は今解放軍に身を置いている。誰も肉親がいないと思っていた僕には実は行方不明だった姉上がいた。従兄弟で解放軍のリーダーであるセリスにも会えた。





…そして幼かった頃出あってそしてさよならを言えなかった銀髪の少女は今僕の隣にいる。

僕らは再会した。再会した時にすごく驚いたけど、こうして会えたのは父上たちの、英雄シグルド叔父上たちのおかげなんだろうと思う。

「リーフ様?何を笑っていらっしゃるのですか?」

「え、ああ…うんちょっと出会った頃のことを思い出してね。」

「あの時のことですか。あの時、私はあなたに出会えていなかったら…」

「ティニー、もう君は一人じゃないだろ?ほら、立派なお兄さんがいるじゃない。」

そう、ティニーにも兄弟がいたらしい。小さい頃に引き裂かれた兄が。引き裂かれてしまったせいか、ティニーの兄であるアーサーはかなりなシスコンである。おかげでは僕はティニーと仲良くしているからといっていつもにらまれる始末。ま、そんなにいやな人ではないしティニーのことも真剣に心配している…のだろうと思うけど。

「そうですね、リーフ様もお姉様に会えてよかったですね。」

「姉上か、心を開いてくださるといいけど。アリオーン王子が姿を消してしまったからなぁ」


トラキアの王子・アりオーン。姉上は本当の兄のようだと慕っているみたいだけど、僕は理解できなかった。両親の敵の息子なのに。

それに姉上は僕と話していても楽しそうでない気がする…どこかとまどってるようで。コープルとかハンニバル将軍の方が実弟の僕よりも姉上に詳しいし…。彼らと話している方がなんだか楽しそうだ…。

「リーフ様、アルテナ様は照れているだけですよ。そのうちきっと打ち解けますよ。」


「うん、そうだね。ねぇ、ティニーこれからの戦いで無理をしてはいけないよ。僕もできるだけ君を守るから。君に何かあったら僕は…」

「はい、リーフ様。でもリーフ様もご無理をなさらないでくださいね。」

そいえって僕らは笑いあった。戦いはまだ続くけど姉上やフィン…そしてティニーがいるからがんばっていけそうな気がした。そして僕は姉上や仲間、そしてティニーの支えになるような人になるんだ。

<END>
あとがき
の話はリーフくんとティニーちゃんの出会いを成長したリーフの視線で書いてみました。
初の試みで書いた駄文です。
で、レンスターから逃亡中のリーフとマンスターで育っていたティニー、
出会いがあったかも?と思いませんか??
地理的にも無理のない気がするんですけど…どうでしょう。
この組み合わせはのちのちいろんなドラマができるのですv

実は、再会編は大方ストーリーができてます。
そのうち、ちょこちょこ書いていこうかと思っております。

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